樹木医の間で有名な土壌改良の方法に、割竹挿入法というものがあります。植物のことを話すとき、なぜか科学的な根拠に基づかない情緒的な話が世間一般に受け入れられやすい傾向がありますが、実績の残された方法を学んで自分なりに消化し、さらに人に伝えていくことは重要な意義があると思います。
この割竹挿入法という土壌改良方法は、多くの方が実践し情報が蓄積されているという意味ではもっとも科学的ではなのではないでしょうか?
期待される効果
一番の効果は、排水性の改善だと考えています。植物が健康的に生育するために重要とされる根は地表から60cmくらいの深さに集中しているとされており、ちょうど人の踏圧や降水などによって締め固まりやすい深さです。
自然界やそれに近い環境では、様々な微生物などの働きによって土壌の環境が改善されていくことが多いのですが、人為的に植栽された緑化樹木の場合はそういうわけにはいきません。樹木の健康を長期間維持していくためには、悪化していく土壌条件を人為的に改善していく必要があります。
せっかく穴を掘るので、ついでに水を注いで簡易的に排水性をチェックします。竹によって通水が確保されますので、掘った穴で水はけが良い状態であれば、一定の土壌改良効果は期待できると考えています。
割竹の準備
横浜で事業をしていたときは、竹を使うときは仲の良い竹材店で材料の加工を頼むことが多かったのですが、古座川に来てから状況は一変しました。そもそも竹材店というものがありません。竹材店どころか石屋もなければ資材も買えない。それもそのはず。他には植木屋も造園屋も、ましてや樹木医なんていないのですから。庭や緑地管理の需要がないのに、その材料屋さんが成り立つ訳がありませんね。
仕方がないので、竹を伐採するところから始めます。正確には、良い時期にまとめて切っておいた竹を竹藪の管理がてらある程度ストックしておき、必要な時に引っ張り出して使っています。
造園技能士であれば竹の加工は難しくありません。0.6-1mくらいに切りそろえて、割って、節を抜き、穴をあけ、仕上げに炭化もしくは油抜きをします。都会だとバーナーを使ってあぶるしか選択肢がない場合もありますが、量が多いと焚火が良いですね。寒い時期でも温まることができます。
シュロ縄や麻縄などで再び筒状にして、割竹の準備は完了です。
施工
ふくしき(ダブルスコップ)などを用いて掘削し、できた穴に割竹を挿入します。パーライトなどの土壌改良資材などで埋め戻しを行います。このとき、竹には麻布で蓋をします。
竹の天端は、地面から突き出すことが多いのですが、人が入れる場所だと竹によって躓いたり、歩行の妨げとなることも考えられるので、必要に応じてG.Lに合わせて埋め戻すことも可能です。
施工例
こちらは実際に施工を行った、熊野那智大社が所有するの和歌山県指定文化財「枝垂れ桜」です。一般参拝では入ることができませんが、お祓いを受けて本参拝を行う場合はこの「枝垂れ桜」を見ることができます。天端をG.Lに合わせて砂利を埋め戻すと、施工前と直後には見た目には全く変化がありません。今後の排水性の改善や樹勢回復などの効果が期待されます。
PDF資料【割竹挿入法】
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あがらの桜をまもるんや!
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