一般の方には聞きなじみのない病名だと思いますが、この悪性高血圧というのが2021年に僕のかかった病気です。これまで実家の家族にも自分の口からは伝えていませんし、そういうことは公にするべきではないと言ってくる人もいます。
しかし、この病気を気付かずに進行させてしまう人を少しでも減らしたいということと、いま生じている様々な問題を解決へ導くこと、そして僕自身の記録を残すという意味を込めて、現状を書き記しておこうと思いました。何より、この病気になった原因はストレスをため込んでしまう僕の考え方にあると思うので、それを変えるためにも吐き出しておく必要があるとも感じます。
まず断っておきますが、僕は樹木医ではありますが人間の医者ではありません。この病気について調べてみると、様々な媒体にまるで統一されていない内容が書かれています。そのような情報の中から、実体験に基づいたことをできるだけ公平な内容になることを心がけてこの投稿を書こうと考えています。
悪性高血圧とは
僕も自分が当事者となるまでは知らない病気の名前でした。「悪性」とつくとすごくよくなさそうな気がします。実際に気づかないで適切な治療が行われないと、半年から一年ほどの生命予後だと書かれているのを見かけます。それはそれほど間違っていないでしょう。その場合でも直接的に見えてくる死因は、大動脈解離や脳出血などの心臓や脳の血管の破裂が中心となるはずなので、それがこの病気があまり知られない理由になっているのかもしれないと思いました。
僕の場合は、腎臓の機能が低下したことが発端なのではないかと考えています。腎臓は血液を介して体内の老廃物や余分な水分、塩分などを濾しとり、尿として排泄するための臓器であり、ストレスなどによって著しい負荷がかかると、機能が低下することがあります。腎臓の機能が低下すると、血流を増やしてそれを補おうとするため、血圧が上昇します。血圧が上昇すると微細な血管の集合体である腎臓は損傷します。腎臓が損傷すると機能が低下するため、血圧を上昇させます。血圧が上昇すると腎臓が損傷するため、機能が低下します・・・。このようにスパイラル状に腎臓の損傷と血圧上昇を短期間に繰り返し、異常な高血圧によって脳、腎臓、大動脈、心臓などに重篤な障害が起こり、死に至る可能性がある怖い病気が悪性高血圧です。
原因はホルモンの異常や、腫瘍などの場合もあるそうですが、生活習慣や過度の肉体的・精神的ストレスがほとんどだと思います。僕の場合は昼間肉体的な負荷のかかる外仕事をしている上に、極度の精神的なストレスを受けていた自覚はあるので、なにも文句は言えません。味はもともと薄味のほうが好みでしたし、コンビニの無い山奥で生活していますので、食生活などに関してはもっと気を付けるべき人はたくさんいるのではないでしょうか?少なくとも、自分で事業をやっていたために、昼夜問わず働き続けて休みを取らない生活をながく続けていたことは、大きな要因のひとつになったと判断できると思います。
僕が初めて病院に行ったのは、激しい頭痛と嘔吐で食事が取れなくなり、痩せたことを周囲に心配され始めてからです。水も飲めなくなったときは、自分自身で「いまさら病院に行ってももう遅いだろう」と覚悟をしていましたし、原因もわからずに耐え難い頭痛と吐き気に襲われたときは「死んだほうが楽だな」とも思いました。
脳血管の問題が疑われたので最初の病院で脳のCTを撮りましたが、特に異常はないと言われてしまいました。その代わりに血圧が高すぎて測れないと言われ、数日間降圧剤を使って血圧を下げた状態で、収縮期血圧が230mmHg以上、体重は20kgほど減っていました。いま思えばそりゃ心配もされるよなと思います。血圧が高いことを知ったのはこの時が初めてです。
これは高血圧脳症といわれる状態です。普通の高血圧は180mmHg程度までで、ここまでになることは無いため、最初に行った病院の診断内容に不信感を抱いた僕はその時点でいろいろと調べて腎臓に異常があることを推測し、別の病院の腎臓内科に行きました。
そこで悪性高血圧という病名であることがはっきりし、薬での治療を進めた結果とりあえずの緊急的な状態からは脱しています。ただ、異常な高血圧状態が続いたことで心臓に負担がかかり、心肥大が確認されました。また腎臓の機能は通常の1/3程度まで落ちているようです。基本的に回復する臓器ではないため、人より長生きはできないのだろうと思います。
悪性高血圧を防ぐには
結論から言うと、日常の血圧測定だけで重篤な状態になる前に気づくことが可能です。とても簡単なことですが、ふつうの40歳は日常的に血圧を計測する人なんて滅多にいないのではないでしょうか?
腎臓は異常があっても、深刻になるまでほとんど自覚症状がないことが知られていますが、すぐに病院に行くような人であれば、少なくとも悪性高血圧という状態にまで至る心配はいらないと思います。心配なのは、むしろ健康で病院嫌いの人です。多くの人は健康診断などを受けていると思いますが、急速に進むことがある病気であることを考えると、年に一回の診断では穴ができると思います。僕も少し前に狩猟免許の関係で健診を受けた時には、特に何もありませんでした。
悪性高血圧以外でも、血圧は一つの身体の変化を読み取る目安となりますので、治療や投薬などの判断は別にしてマメに測ることをおすすめします。少なくとも僕は、そのことに関して強い後悔の念を抱いています。
悪性高血圧の兆候
疲れやすくなったとか、肩こりや軽い頭痛などの緩やかな症状は昔から続いていたので、どこからと線を引くのは難しいことですが、振り返って思えば、「あの時こうしていれば」というタイミングはありました。もっと早く対処するべきだたという明確な兆候です。
2021年の7月10日、僕ば技術士という国家資格の二次試験を受験していました。一日中ひたすら論文を書き続けるそれなりに難しい試験です。試験中にまともに集中力が続かないくらいの頭痛に見舞われましたが、年に一度しかない試験ですし、和歌山の山奥からわざわざ泊りがけで行っている試験なので、ひとまず終了まで我慢しました。風邪か何かかと思いながら夕食のお弁当を買ってホテルまで戻りましたが、頭痛と吐き気がひどくなり横になったのです。一瞬脳出血などを疑い、救急車を呼ぶことを考えましたが、ホテルでのことだったので躊躇し、気づくと次の朝でした。目が覚めると症状が改善していたので、「脳出血などであればそのまま死んでいただろう」「死ぬほどの病気ならあの程度の痛みじゃ済まないか」と思ってしまい、何日かするといつの間にか忘れてしまいました。
僕は若いころに柔道で大きな怪我をしており、何度か肩の手術をしています。それが原因で、慢性的な肩こりに悩まされていました。造園業や特殊伐採などの身体を使う仕事を続けてきたため、少し疲れがたまると肩こりがひどくなり、頭痛や食欲不振になることが多くありました。そこに我慢強いということも加わり、正しい判断ができなかったことはいまでも悔やまれます。
家族や心配をしてくれた人に対して本当に申し訳なく思います。
他には眩暈や、光に対して過敏になる、目の奥が痛いなどがありました。異常な頻尿と血尿に気づいたのは、病院に行き始めてからすぐのことでした。
服用している薬
現在僕が服用しているのは、【フォシーガ】【エンレスト】という腎臓を保護するための薬と、【ニフェジピン】という血圧を下げるための薬です。腎臓などいくつかの器官は、基本的に一度ダメージを受けると元の状態に回復することがありません。これらの薬は、今よりも状態を悪化させないための、現状維持を目的とした薬であり、症状の改善を目的とするものではありません。将来的に透析治療などが必要となることを回避、あるいは先延ばしするのが目標で、いまの体調が改善するものではありません。
慢性腎臓病CKD
現在は、CKDといわれる慢性腎臓病の状態です。疲れやすかったり、眩暈やふらつきがあったり倦怠感があるなどの症状が日常的にあります。しかしこの症状そのものは腎臓が悪いせいで起こるのか、服用している薬によるものなのかは判断できません。全体的には治療を始めた頃よりはいくらかマシになりった気がしていますが、気温が低くなってからはしんどい日が増えてきました。基本的に、疲れるまえにすぐにちゃんと休んでくださいと言われているので、それができるように心がけています。若いころから不眠に悩んでいましたが、血圧が安定しないせいかよりひどくなった感じがします。
いままでやってきたことが外での作業も多かっただけに、大きな制約を受けていることはやむを得ません。筋トレなどをやめてくださいと言われているのはかなり苦痛ですが、子どもたちとサッカーをしたり、軽い運動はあまり気にしないようにしています。
もともと薄味が好みなので毎日の食事に不自由はあまりありません。胡椒や七味などのスパイスで補えば、それほど不満なく過ごすことができています。妻は頑張ってさらに薄味のご飯にしてくれているので、家族に負担は強いているはずです。妻以外の料理は基本的にすべてしょっぱく感じるようになりました。好きだったラーメンを我慢するのは苦痛ですが、そもそもラーメン屋のない山暮らしなのが幸いです。たまに街中に行く時は食べたりします。むしろカフェインを避けることが苦痛です。毎日の習慣であったコーヒーをすべてカフェインレスにしたり、白湯を飲んで我慢するのはつらいものがあります。出かけたときは普通に飲んでいます。
自分が蒔いた種であるということはもちろん自覚していますが、結局のところは誰でも、どんな境遇でも、重要なことは置かれた環境の中で何をするかということに変わりはないのだろうと考えています。
将来の不安
僕はもともと造園の個人事業を営んできたので、早い段階で少し高めの保険には入っていました。しかし現存する保険の多くは三大成人病を軸に考えられており、入院や手術を保証するものがほとんどで、悪性高血圧や通院での投薬治療、それに伴う仕事の制限はまったく保障の対象となりません。
これまでのように身体にかかる負担の大きい仕事ができなくなり、ストレスを避けて生活するのはとても難しく、子どもたちをきちんと育てていけるかということは当然不安に思っています。
また居住してるのが過疎の山村なので、腎臓の状態が悪化して透析などが必要となった場合、いまの生活を続けられなくなることも十分に考えられます。いま行っている活動をうまく続けていくためにも、どうするか考えていく必要があります。
以上のようなことが、悪性高血圧という病気を経験した僕の体験談です。同じ病気で不安を抱えている方や、気になることがある方は お問い合わせ からご連絡ください。
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