【アカマツの採種】古座川町の樹木医甚兵衛

樹木医

アカマツとは?

アカマツ(Pinus densiflora)はマツ科マツ属の常緑針葉樹です。メマツ(女松)とも呼ばれ、庭木としても古くから親しまれています。樹高は30mを超えることもあり、マツタケが生えることも有名です。

古座川町を含む紀南地方の天然林ではよく見られた樹種のひとつですが、松食い虫(マツ材線虫病)の被害によって大きく数を減少させています。

特別な理由がある場合を除いて、アカマツを増やそうと思ったときは実生(種子を播いて発芽させる方法)が用いられますので、ここでは種子の取り方から種まきまでを説明したいと思います。盆栽などに仕立てたい場合にも、早いうちから自分の思った形を作ることができるのでおすすめです。

スギやイチョウ、ソテツなどと同じように、胚珠がむき出しになった裸子植物です。風によって花粉を運んでもらう風媒花です。裸子植物には子房がないため、受粉をしても果実はできません。ではお馴染みの「まつぼっくり」は一体なんなのでしょうか?

まつぼっくりの採取

一般に「まつぼっくり」と呼ばれているものは、正式には毬果もしくは球果といいます。地面に落ちているものや枝に付いていても既に茶色くなっているものは古く、ほとんど種子が残っていません。

まだ枝についているまつぼっくりを高枝切り鋏などで採取します。時期は10月下旬頃が目安となります。地域によって異なりますので、よく観察をして緑色から紫色から茶色っぽく変化してくるタイミングが良いと思います。まだ薄い緑色の早い時期に採取してしまうと種子が成熟しておらず、遅すぎるとまつぼっくりが開いて種子が飛んでしまいます。

※松ぼっくりを採取するときは、母樹の所有者から許可を得てから行いましょう。

この写真のまつぼっくりは、2022年10月21日に古座川町内で高枝切り鋏をつかって採取しました。

採取したまつぼっくり

まつぼっくりの乾燥

採取したまつぼっくりを風通しの良いところに置いて乾燥させます。夜露や雨が当たるところは避けましょう。だいたい2-3週間経つと鱗片が開いて種子が外れやすくなるので、焦らずにしばらく待ちましょう。こぼれないように大きめのバットに入れておきます。

鱗片の隙間にある種子

乾燥が進んで開いてくると、その隙間から自然に脱粒するものもあります。挟まったままになっているものは、まずは逆さまにして軽くたたいてみましょう。それでも残っているものは、ピンセットなどを使って種子を傷めないように丁寧にはずすか、隙間を押し広げるようにして球果からはずします。

ピンセットではずした様子

僕の場合は先の曲がったピンセットを愛用しています。いろいろと試して自分に合ったものを使うと良いかもしれません。無理やりこじろうとして種子を強く挟むと割れてしまうことがあるので注意が必要です。

種子の調整

マツの種子には翅がついています。木の上に成ったまつぼっくりが成熟して乾燥すると、風にのって遠くに飛んでいくための工夫ですね。

発芽には必要ないので、軽く揉んで翅を取ります。充実した粒と、取り外した翅や混入したゴミ、中身の充実していないシイナ粒などの不要なものを選り分けるために風を使います。軽く息を吹きかけて飛ばすと簡単に選別することができます。

アカマツの播種

僕は基本的に採取した種子をすぐに播種する「取り播き」をおすすめしています。自然環境下においては散布された瞬間から種子はすぐに激しい生存競争や環境の変化にさらされます。できる限り自然に近い形で育ててあげたいという思いがあるからです。また、樹木医甚兵衛が樹木を増殖する第一の目的は、自然環境を保護することにあります。そのため、苗木の生育にも必要以上にコストをかけるべきではないと考えています。

翌春まで保存する場合は、ジップバッグや密閉容器などに入れ、冷蔵庫に保存すると良いでしょう。長期保存する場合には、さらに気密性の高い容器を使って乾燥剤を入れると良いとされています。

種子を播くときの用土はそれほど神経質になる必要はないと思います。畑などに直播で十分です。

普段使っている園芸用の土などがあれば、それを排水性の良い状態で清潔に使えば問題ないと思います。

覆土は5mm程度が良いと思います。アカマツは陽樹ですので、十分に日の当たる場所で水はけに注意しながら育ててあげましょう。

アカマツの実生苗

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クマノザクラの魅力を紹介するフォトブックとなっており、写真も文章もすべて樹木医甚兵衛の手によるものです。

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